タイトル『電送人間』(2008)

 ワトソンボードに、水彩絵の具で彩色。

 東宝特撮映画『電送人間』(1960年)です。

 『電送人間』は、東宝特撮の「変身人間シリーズ」の第2作で、第1作は『美女と液体人間』(1958)。3作目が、イラストにも描いた『ガス人間第一号』(1960)です。

 『ガス人間第一号』は素晴らしい作品でしたが、『電送人間』もなかなか面白かったです。

 仁木博士(演:佐々木孝丸)が発明した物質電送機を使って、元陸軍兵長・須藤(演:中丸忠雄)は、私怨を晴らすために、殺人を繰り返す。自分を電送して、相手のいるところまで行き、「銃剣」で殺人を完遂する。

 殺す相手は、陸軍時代の自分の上官達である、大西中将(演:河津清三郎)4人。

 太平洋戦争の終戦のどさくさに、国民が救出した金の延べ棒を横領しようとした、大西中将達。それを知った須藤は、帝国軍人としての怒りを持つ。しかし秘密を知った須藤は、軍に科学者として協力していた仁木博士ともに、大西らに殺されてしまう。

 しかし、須藤と仁木博士は、生きていた。

 戦後博士は、電送機の研究を続けて、世間とは隔絶した生活をしているが、須藤は、大西らに復讐する機会を待っていた。そして、博士には内密に電送機を使い、大西達の殺害を決行するのであった。

 大西達は、キャバレー経営や密輸入でもうけて私服を肥やすために生きている。当初須藤は、帝国軍人としての正義で、大西らの横暴さを憎みましたが、しかし個人的な復讐を果たす殺人鬼に変わってしまう。

 戦前の全体主義の時代から、戦後の個人主義の時代になると、殺人鬼として生きることを選択してしまう須藤。個人主義時代の、暗い面を見るような気がします。

 須藤を演じた中丸忠雄が、クールな二枚目で、すごく声が渋くてカッコ良いので、キャラクターが際だちます。

 ただ中丸さんは、この映画を試写で観て、「こんなお化け映画に出るために俳優になったんじゃない」と後悔したそうです(DVDのオーディオコメンタリーより)

 この頃(昭和30年代)は『ゴジラ』もお化け映画扱いだったそうですが、俳優側に当時の特撮映画に対する評価というか偏見のあったことが分かるエピソードです。

 この次の『ガス人間第一号』では、ガス人間=水野役を、土屋嘉男さんがノリに乗って好演したわけですが、当時の映画人としては土屋さんのスタンスは、珍しいんでしょう。彼は、SF物が元々大好きだったそうなので、特異なケースなのでしょうね。

 でも中丸さん演じる須藤はとても不気味で、存在感が抜群ですね。

 電送人間を追いつめるスリルがあるし、とても楽しめる作品です。

 個人的には、大西中将の部下の隆昌元(演:田島義文)が経営する、キャバレー「DAIHONEI」に働いているホステスさんが、超ミニスカートの水兵ルックで、今観てもエロいのが、気に入りました(苦笑)

 ちなみに、映画冒頭のお化け屋敷のシーンで、若い客の役で、「アタックチャンス!」の児玉清さんが出ています。