◎2005(H17)/7/27(水)

ズレた1日

 多に遠出しないので、たまに出かけるとなると、予定をしっかり立てて、有意義な日にしたいと思い入れたっぷりに出かける。でもいつもそう思った通りに楽しめない。この日もそうだった。

 かねてから映画『兜王ビートル』を観たかった。渋谷のシネ・ラ・セットでの単館上映。この映画館は、毎週水曜日は1,000円で観ることができる。それで、27日の水曜日に観に行こうと思った。

 渋谷に出るのなら、久しぶりに専門学校時代の想い出のラーメン屋に寄ろうかな。

 それと限定のオモチャを中野ブロードウェーのお店に予約していて、商品が入荷したとの連絡が26日に来ていたので、ついでに取りに行こう。

 さらに絵を観に行こう。江東区森下文化センターというところがあるのだが、ここで古いマンガ家の原画展をやっている。もうすぐ会期が終わるので、ついでにこの日に観てしまおうと思う。

 色々予定を立てて、台風一過の灼熱の東京へ出発。

 

 

 午前10時45分、中野ブロードウェー着。建物の中は、まだ開店前の店が大半で、閑散としている。まんだらけもまだ眠っている。限定商品を予約したおもちゃのポニーは、11時開店。すでにシャッターが開いているお店前には、近所の子供達がちらほら。平日のこんな時間、30代のヒッキーがおもちゃ屋の前にいるのは、少し罪悪感がある。

 11時になり、レジへと向かう。頼んであったゴジラの限定を購入。店にはゴジラ限定の問い合わせの電話があるらしく、朝から忙しく店員が対応していた。

 他にも私よりも歳上そうな、リュックを背負ったくすんだオタクファッションのおじさんがいた。彼も限定狙いだろう。ヒッキーの私が言うのもなんだが、平日のこの時間にオモチャを最優先に買っているのだから、世間のテンポからズレた人生を送っている人なんだろうなぁと思う。

 

 

 私の若い友人(学生)が、この限定のゴジラを欲しがっていたのを思い出した。彼はどこにも予約してないので、購入できないのではと焦っていた。ポニーにはまだ、予約分以外にも在庫はあるみたい。どうする?教えてあげようか。迷う。彼にはヒッキーであることは隠しているので、電話すると、平日の午前中に働いてないのは何故?と疑われそうだからだ。でも年長者らしく、気の利いたこともしておきたいし。少し迷ったあげく、電話する。通じたら、年配の男性の声。

 「あなた誰ですか?息子の友達?」

 しまった。焦って電話したので、友人の携帯ではなく、自宅にかけてしまった。彼の父親だ。慌てて自分と彼との関係を告げて、お父さんから友人へ電話を代わってもらう。眠そうな彼の声が聞こえた。

 「もう予約できました。」

 ガク。心配して損したなぁ。無職・ヒッキーとバレるリスクを覚悟して電話したのに・・・。

 ここらへんから、この日は何かがズレている気がした。調子が狂うというか・・・。

 渋谷シネ・ラ・セットに到着したのは、上映開始30分前。この映画館は、ビルの一室にあるのだが、入ってビックリ。試写室かと思われる小さな部屋だった。座席が50人分くらいしかない、こぢんまりとした部屋。客は私以外に、見た目20代のカップルが一組。3人しかいない映画館て、初めてかも。期待が高まる観客数で、映画スタート。

 ・・・『兜王ビートル』終了。う〜ん、つまらなかった・・・。渋谷まで来た期待と労力と交通費が、何とか面白いとフォローさせようとしたが、本音は裏切れなかった。

 監督は河崎実という一部マニアに知られた人。私も割と好きな監督で、昨年は彼の『いかレスラー』を観た。『いかレスラー』は、プロレスラーがイカになってライバルのタコレスラーやしゃこボクサーと闘うという作品だった。主演の新日本プロレスの西村修が好演し、なかなか面白い作品だった。河崎監督の持ち味であるおバカなギャグテイストもまぁまぁ笑えた。それで期待して『兜王ビートル』を観に来たのだった。

 今回は悪の宇宙人にさらわれカブト虫と融合・サイボーグ化されたレスラー兜勇一が兜王ビートルとなり、ライバルで同じくクワガタと融合されたレスラー・ディザスターと闘うというお話。主演は前作同様本物のプロレスラー・大阪プロレスのマスクマン・兜王ビートルである。このビートルが、正直言うと貧弱でカッコ悪かった。彼の設定、コスチュームは、漫画家の永井豪が担当している。永井豪デザインのマスクマンレスラーでは、新日本プロレスの獣神サンダーライガーが有名。全身コスチュームが肉体を覆っているが、Jr.ヘビーとは思えないほどの厚みのある鍛えた肉体が、コスチューム越しにもレスラーであることを強烈に主張している。対してビートルはJr.でもさらに軽量な上に、細い身体。細い腕。それとマスク越しにも、あまりカッコ良いとは言えない素顔と分かる。ヒロインの星川百合(演:中川翔子)が「カッコイイ!」と惚れしてしまう設定だが、このマスクとコスチューム、肉体ではなんとも説得力がない。

 

 

 河崎監督のやる気もあまり感じられなかった。本作の企画が持ち込まれた当初は、河崎監督はあまり乗り気ではなかったようだ。それがやはり出てしまったように思う。『いかレスラー』の時に感じた、作品への暑苦しい情熱が、本作の画面には感じられなかった。

 期待はずれでガッカリしながら外へ出た。ヤリみたく肌を刺す白い日差しが、渋谷に降り注いでいる。こうなったら、昼飯で憂さ晴らしだ。予定通り専門学校時代のなじみのラーメン店、亜寿加(あすか)へ向かう。

 午後2時になっても、店内はなかなか盛況だった。排骨(ぱいぐー)担々麺を注文。ランチタイムなので、ライスがサービスで付くので、併せて注文。ラーメンライスはおデブへの黄金パターンだが、美味くて魅惑の組合せ。つい止められないでいる。

 ここの担々麺を初めて食べた時は、ものすごく感動した。私は食通というわけではないけれど、今まで食べてきたラーメンで一番美味かった。あの感動が忘れられず、久々の注文である。

 

 

 排骨担々が来た。久しぶりの再会だ。まず青梗菜(ちんげんさい)を食す。私は嫌いな物から順に食べる主義である。うわ、かみ切れない。私は近年歯の矯正治療を受けていて、今一時的に歯のかみ合わせが悪い。だから細い麺とか野菜とかが、上手く咀嚼(そしゃく)できない。だから、青梗菜が上手くかみ切れないのだ。歯の奥にかみ切れない青梗菜が詰まる。ラーメンは冷めないうちに食べないと美味くないから、その状態で食べ進める。

 咀嚼が上手くいかないと、味わいも薄れるのか、昔の感動がなかった。確かに美味いんだけど、昔ほどでは・・・。歯が悪いと、飯もまずくなるのかなぁ。なんかお年寄りみたいだな。

 排骨は、割と想い出通りの味だった。排骨は、バラ肉を唐揚げ風に揚げたもの。スパイシーなころもに辛味とゴマの甘みが混在するスープが上手い具合に染みて、美味いのだ。最後の方に取っておいて、ライスと一緒に食す。

 もう一つ期待通りではなかったが、スープまで飲み干し完食。これを読んでいる皆さんは、歯を大切にした方が良いですよ。美味い物が、美味く感じられなくなりますからね。

 

 満腹のお腹で、半蔵門線へ。清澄白河下車で、江東区森下文化センターへ。時は、午後3時頃。日差しが心持ち和らいだところ。

 

 

 この界隈は田河水泡(たがわすいほう)の漫画『のらくろ』の発祥の地で、のらくロードという商店街がある。その商店街を進むと、江東区森下文化センターがある。この施設の中には、常設でのらくろの展示室がある。入場無料。

 お目当ての展示は、『きりえ・染絵・童画・漫画展』。こちらも入場無料。寺尾知文、内山卓三、カゴ直利、都築進の作品を展示。私は彼らを誰一人として知らない(苦笑)。でも昭和の古めの児童漫画家の絵って割と好きなのですよ。

 

 

 それで行ったのだが、これも期待と違ったというか。寺尾知文の漫画の生原稿がもっと見たかったけれど、彼の切り絵作品がメインになっていて、ちょっとガッカリだった。まぁここまで駆け足で色々なところを回ってきたので、疲れていて鑑賞できるコンディションではなかったというのもあるんだけれど・・・。

 疲れ切った身体で、帰路につく。今日は、期待はずれの多い日だったなぁ。思い通りの満足が得られなかったというか・・・。まぁ私自身が世の中とズレた人生を歩んでいる人間なんで、ズレが多いのも私らしいのもしれない。そう自分を納得させてみた。排骨担々麺と500mmリットルの麦茶2本とコーラ1本でパンパンに満たされたお腹が、少し空しい気がした。

 

 

 

 

 

 

 

↑まだ眠るまんだらけ。こういう状態なら散財しなくてすむ(苦笑)。

↑中野ブロードウェーへ。

↑今回発売の限定ゴジラ。マニアは必死にゲットに尽力した模様。

↑「勝って兜の王、ビートル!」は、ビートルの決めぜりふ。ビートルに恋するヒロイン・百合の図。彼がもうちょっとカッコ良かったらなぁ。主題歌だけはカッコ良かった。

↑久々の対面、排骨担々麺にライスを添えて。想い出の味。一杯950円は、ちと痛い。

↑のらくロード商店街の入り口。

江東区森下文化センター外観→

↑展覧会告知ポスター。見づらくてすいません。

↑のらくロード商店街の店先にいたネコ。行きと帰りに同じ場所でお昼寝していた。暑いニャ〜。